多くの方がご理解の上とは思いますが、マーケティングはトレンドを追いかけるだけでは成功しません。本当に重要なのは、社会の変化をデータで読み解き、未来を予測し効率的にトライ&エラーを行うことです。
本記事では、総務省や内閣府など公的統計をもとに、マーケターや中小企業経営者が押さえておくべき2025年最新トレンドを具体的に解説していきます。
人口動態の変化が市場を決める
マーケットの土台となるのは人口です。日本の人口構造の変化は、これからの市場戦略に決定的な影響を与えます。少子高齢化が叫ばれてから久しいですが、実際この20年間でどれくらい少子高齢化が進んだのかを、総務省「人口推計(2024年10月)」を元に、数字で確認してみましょう。
人口推移と構成変化(過去20年)
年 | 総人口(万人) | 0~14歳 | 15~64歳 | 65歳以上 |
2005年 | 12,774 | 13.8% | 66.1% | 20.1% |
2010年 | 12,806 | 13.2% | 63.8% | 23.0% |
2015年 | 12,711 | 12.6% | 60.8% | 26.6% |
2020年 | 12,557 | 12.0% | 59.4% | 28.7% |
2024年 | 12,300 | 11.5% | 58.4% | 29.5% |
- 総人口は20年で約474万人減少
- 15〜64歳の「働く世代」は約7.7ポイント減
- 65歳以上の高齢者比率は9.4ポイント増加し、29.5%
上記データから明らかなことは、マーケティングのターゲット層が着実に「高齢者寄り」へシフトしているということです。働く世代が多いものの、若年層を対象にしたビジネスは確実に縮小していき、高齢者向け市場が相対的に拡大していくことがわかります。
一方で、高齢者層を狙ったマーケティングは「WEBやSNSなどのデジタルコンテンツは活用しないだろう」という先入観から、後回しにされがちです。しかし、実態はどうでしょうか?一昔前までは確かに高齢者がデジタルコンテンツを使うことは少数派でしたが、高齢者もスマートフォンを利用することから実態が変わってきています。総務省「通信利用動向調査」を見ると以下のように変化しています。
シニア層のインターネット利用率・利用目的(2024年)
年代 | インターネット利用率 |
60代 | 88.5% |
70代 | 68.2% |
- メール・LINEの送受信 :60代 85.1%、70代 78.3%
- ニュースサイト閲覧 :60代 68.2%、70代 59.4%
- 商品・サービス情報検索:60代 61.5%、70代 48.7%
- SNS利用(Facebook等):60代 43.7%、70代 30.5%
- オンラインショッピング:60代 55.3%、70代 40.1%
10年前(2014年)は、60代で71.8%、70代で47.5%の利用率だったことを考えると、デジタルリテラシーは格段に向上しています。単純に10年前の60代が70代になっているので当然利用率は上がりますが、それ以上に身近になったデジタルツールを活用するようになったのだと考えられます。
LINEやメールを中心とするコミュニケーションツールだけでなく、ニュース閲覧や商品検索といった能動的な情報収集も行うようになっています。オンラインショッピング利用も顕著に伸びており、シニア層向けEC・デジタル広告は今後ますます重要性が増すでしょう。
情報接触の変化:テレビ離れ、スマホシフト
次に重要なのが、デバイス接触の変化です。20年くらい前までは、家の中心にはテレビがありました。午前中はお母さんが家事をしながらテレビを付け、午後に主婦向けのドラマが始まり、夕方に学校から帰ってきた子供がテレビを付け、夜には仕事から帰宅したお父さんがテレビをつける、といった具合にお茶の間の中心にテレビがありました。
現在はどうでしょうか?若年層に至ってはテレビを持っていない人も多く、持っていてもネトフリやアマプラ、DAZN、TVerなどの動画配信サービスを見るためのモニターとして活用している人も少なくありません。移動中だけでなく、自宅にいる時も時間があればスマホを開く人も多いのではないでしょうか。
以下のデータは、総務省「情報通信白書2024」から抜粋した数字になります。全体の数値になるので、世代別になるとさらに変化が顕著になる可能性があります。
デバイス別1日平均利用時間(2024年)
デバイス | 平均利用時間 (所有者ベース) |
補足 |
スマートフォン | 157分 | 全体平均:122分 |
テレビ(リアルタイム) | 127分 | 非所有者:約7% |
パソコン | 59分 | 全体平均:44分 |
タブレット | 28分 | 全体平均:19分 |
▼所有率データ
年 | スマホ保有率 | テレビ保有率 |
2015年 | 64.2% | 96.0% |
2020年 | 83.4% | 94.4% |
2024年 | 91.7% | 92.2% |
スマートフォン保有率は9割を超え、1日の利用時間は平均2時間以上。テレビ視聴は依然として高いものの、特に若年層では「テレビ離れ」が顕著です。動画配信サービス利用率を年代別に見ると、以下のようになります。
- 20代:90.7%
- 30代:88.2%
- 40代:82.5%
- 50代:71.3%
前述したように、特に若い世代では、YouTube、Netflix、Amazon Prime Videoなど、オンデマンド型の動画メディアの利用が主流となってきていると言えます。
消費行動のデジタル化:EC市場の伸び
購買行動もまた、デジタル化が加速しています。経済産業省「電子商取引に関する市場調査」によれば、BtoC-EC市場規模(2024年)は約24兆円、前年比5.2%増となっています。
Amazon、楽天市場を始めとしたEC利用は一般化されました。ネットスーパーが充実し、ECとリアル店舗の中間のサービスも一般化されています。例えば、イオンなどのスーパーでは、お客さんがネットで注文し、店舗側で商品を集め宅配するサービスがあります。これらは、田舎のお年寄りが運転免許を返納しても生活することができるライフラインになっているケースもあります。
BtoC-EC市場の推移
年 | 市場規模(兆円) | 前年比成長率 |
2018年 | 18.0 | +8.1% |
2020年 | 19.3 | +7.2% |
2022年 | 22.8 | +5.7% |
2024年 | 24.0 | +5.2% |
- 物販系:+56%
- サービス系:+71%
- デジタル系:+31%
▼シニア層EC利用率推移
年 | 60代 | 70代 |
2014年 | 34.2% | 22.7% |
2019年 | 48.5% | 35.0% |
2024年 | 58.0% | 42.0% |
▼ソーシャルコマース市場規模(国内)
- 2022年:約9000億円
- 2024年:約1.3兆円(前年比約16%増)
EC市場の成長は持続しており、特に60代・70代といったシニア層の利用率増加が顕著に見られます。さらに、Instagram、LINE、TikTokなど、SNSを介した購買(ソーシャルコマース)も拡大しており、若年層だけでなく幅広い世代に浸透しています。
地方市場の再注目:人口減でもチャンスあり
日本全体では人口減少が進んでいますが、地方市場には逆にチャンスも潜んでいます。
内閣府「地方創生に関する意識調査」(2024年)によると、20代〜40代の「地方移住希望者」は約30%。コロナ禍以降、都市部から地方への人の流れが一部で定着しました。
また、総務省「地域IoT実装推進調査」では、地方の中小企業によるEC活用やSNS集客が加速していることも明らかになっています。
地方におけるデジタル活用と移住意識
- 地方移住希望者(20〜40代):約30%
- 地方部のテレワーク利用率:22.4%
- 地方中小企業のECサイト開設率(2018年→2024年):18.7%→31.5%
コロナ禍以降、都市から地方へ人が流れ、その後都市部に戻った人も多いですが、一部では定住化も進んでいます。働き方にも変化があり、若者が地方に居を構えるケースが増えています。これにより、2つの可能性があります。
1つは、地方にリーチしたマーケティングの有効性が増すこと。都市部をターゲットにしたマーケティングはレッドオーシャンですが、地方はあまり競争率が高くないエリアもあります。これまでは、ネットでのリーチが難しいと考えられていましたが、住人の若返りやシニア世代のインターネット慣れにより可能性が広がりました。
2つ目は、地方にデジタル人材が増えることで、地方の商品の販路を全国へ広げる動きが活発化することです。地元密着型ビジネスとデジタルの融合が新たな成長機会を生み出しています。
信頼を得るブランディング:社会課題との接続
現代の消費者は、単にモノを買うだけでなく、企業の「姿勢」も見ています。
内閣府「消費者意識基本調査」によれば、「企業の社会貢献活動を重視する」と答えた人は全体の48%。特に20代・30代では60%を超えています。SNSなどで良い情報も悪い情報も拡散されやすくなったこともあり、若い世代の意識が、変わってきていることが伺えます。
消費者の社会課題への関心
- 企業の社会貢献活動を重視する:全体48%、20〜30代60%以上
- 重視する企業活動:
- 環境保護・脱炭素:68%
- ダイバーシティ推進:62%
- 地域貢献:57%
- 環境保護・脱炭素:68%
Z世代・ミレニアル世代を中心に、「自分が支持する企業は、社会に良い影響を与えているか」を重視する傾向が顕著になっています。環境問題への取り組み、ダイバーシティ推進、地域社会への貢献など、企業の社会的姿勢がブランド価値に直結する時代です。悪い例では、新入社員への扱いが悪い、パワハラがあるといった内容で炎上した企業が販売している人気商品に対して、不信感が出て購入しない人が続出しています。
データドリブンの重要性:中小企業でも必須スキルに
マーケティングは「感覚」から「科学」へ。マーケティングの「見える化」が重要性を増しています。
総務省「ICT統計データ集」では、企業によるデータ活用状況について次のような結果が出ています。
データ活用状況(2024年)
- データ活用企業:43.7%
- BIツール導入企業:17.8%
- CRM導入企業:22.5%
▼中小企業の課題
- 専門人材不足:56%
- コスト負担:48%
- 効果的な活用法不明:43%
データ活用に取り組んでいる企業は、顧客獲得単価(CPA)の改善率が約1.8倍高いという調査結果もあります(参考:ITmedia調査)。データドリブンな施策は、効果の「見える化」と「改善スピード」を飛躍的に向上させます。
数字から見る、マーケティング最新トレンドはいかがだったでしょうか。感覚的に想定していたものが多かったとは思いますが、具体的に数字を見ると、現実味が増してきますよね。
2025年にマーケティングで勝ち抜くために必要なのことは、以下6つの戦略です。
- シニア市場を狙ったデジタル戦略
- スマホ・動画中心の情報設計
- EC+ソーシャルコマースへの本格対応
- 地方市場×デジタルで新たな販路開拓
- 社会課題に向き合うブランディング
- データドリブンで施策の見える化と改善
「流行に乗る」のではなく、「データに基づき、変化に適応する」こと。これが今後、持続的に成果を上げるマーケティングに必要な考え方になります。
データを味方に、未来に向けた一歩を踏み出していきましょう。
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