現代では様々なものがデジタル管理されるようになり、ChatGPTを台頭に生成AIの登場によってオートメーション化がどの業界でも身近になってきました。そのため、マーケティングにおいてもAI(人工知能)の活用の重要性が高まっています。現代の市場は急速に変化しており、企業の広告戦略・集客施策・ブランディング手法も、その変化に合わせた進化が求められています。
人口減少や高齢化、消費者の行動変容などのマクロトレンドを正しく捉え、AIの力でビッグデータを分析・活用することが、これからのマーケティング戦略の鍵となるでしょう。本記事では、統計データをもとに市場構造や消費者動向を分析し、AIが導入されている事例を中心に、今後求められる戦略について考察します。集客やマーケティングに関わる方は参考にしてみてください。
人口減少・高齢化がもたらす市場構造の変化
まず、日本の市場規模に影響を与える人口動態に注目しましょう。総務省の推計によれば、日本の総人口は減少の一途をたどっており、2025年1月時点の日本人人口は約1億2,065万人と前年比で約90万人減少しました。この減少幅は1968年の調査開始以来最大であり、国内市場の縮小傾向が顕著になっています。一方で外国人居住者は増加していますが、その増加を加味しても総人口は前年から55万人以上減少し、約1億2,433万人となっています。こうした人口減による市場縮小は企業の集客戦略に大きな影響を与え、限られたパイの中でいかに顧客を獲得・維持するかが重要度を増していると言えるでしょう。
この人口減の市場構造でさらに深刻なのが、以前から懸念されている事象ではありますが、高齢化の進行です。総人口に占める65歳以上高齢者の割合(高齢化率)は2025年時点で29.4%と過去最高を更新し、今後も増えると見込まれています。日本の高齢化率は主要7か国(G7)で最も高く、例えば2位のイタリアは25.1%と差をつけています。超高齢社会の到来により、シニア層を中心とした市場セグメントの比重が増し、「シルバー市場」でのニーズに応える商品開発・マーケティングに舵を切る企業も出てきています。例えば、化粧品業界では、若者向けの商品開発だけではなく、中高年をターゲットとした商品のラインナップを増やしています。高齢化を単に悲観するのではなく、「バリバリ働いてイキイキ活動する」元気な高齢者が増えたと考えれば、そこに市場が広がる可能性があります。
実際、総務省の統計によると2人以上世帯の消費支出は世帯主が50代でピークに達し(月平均約36万円)その後は減少に転じますが、支出内訳を見ると世帯主70歳以上の世帯では「食料」の割合が突出して高く、逆に29歳以下では「住居」に、40代では子育て期の「教育」に多く支出する傾向があります。高齢者世帯は日常の食料品や医療・介護関連消費が厚く、若年層は住居や娯楽にコストを割くなど、年齢層による消費行動の違いが明確です。このような統計データから、マーケターは年代ごとのニーズを把握し、商品・サービスの訴求ポイントを調整する必要があるでしょう。また、この傾向は年々後ろ倒しに変化するとも考えられます。
地域ごとの市場動向にも目を向けると、地域差も無視できません。総務省「家計調査」によれば、単身世帯の消費支出は関東地方が月平均19.79万円と最も高く、北陸・東海では15.74万円と最も低い水準で、その差は約4万円に上ります。2人以上世帯でも関東が34.99万円、九州・沖縄が27.89万円と約7万円の開きがあります。都市部と地方で所得水準や地価や物価が異なる中、マーケティング戦略も画一的では効果が薄れます。例えば、購買力の高い首都圏ではプレミアム志向の商品戦略が奏功する一方で、地方ではコストパフォーマンスを重視した訴求が求められるかもしれません。政府統計が示すこうした地域別・年代別の消費動向をエビデンスとして活用することで、市場をセグメントごとに精緻に捉えたエビデンスベースのマーケティング戦略が立案可能になります。また、未来を見据えた戦略立案も不可欠になるでしょう。
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AI導入が進む企業のマーケティング成功事例
この数年で急速に進化しているAI技術は、各業界のマーケティング実務に変革をもたらしています。企業によるAI活用は大企業を中心に広がりつつありますが、業種間で温度差もあります。情報通信業や金融業・保険業などでは生成AIの導入・利用率が高い一方、卸売業・小売業、サービス業では導入率がまだ10%前後にとどまるとの調査もあります。しかしデータ分析や自動化による効率化ニーズはどの業界にも共通して存在し、今後はあらゆる分野でAIマーケティングが主流になると予想されます。ここでは、広告・集客・ブランディングにおけるAI活用で成果を上げている企業の事例をいくつか紹介します。
EC業界:楽天
楽天では、自社サービス内の膨大な購買データや閲覧履歴をAIで分析し、一人ひとりの興味・嗜好に合わせたレコメンデーション(商品推薦)エンジンを構築しています。AIがユーザーの過去の購入傾向から関連商品を提示することで、クロスセル(関連商品追加購入)の機会が増え、結果としてコンバージョン率(購買転換率)の向上につながりました。
元々レコメンデーション機能はありましたが、AIによってさらに高度なパーソナライズが可能となり、購買意欲を刺激し売上増につながりました。また、ユーザーが求める商品を容易に発見できるため顧客満足度も向上しています。楽天は顧客ロイヤルティ指標であるNPS(ネットプロモータースコア)を活用してサービス改善を図っていますが、AI活用によりこのような顧客エンゲージメントの強化にも成功しているようです。
通信業界:ソフトバンク
AIを駆使したマーケティングオートメーション(MA)の導入によって、顧客データ分析と施策の自動化を進めています。ソフトバンクは数千万人規模の顧客から得られる購買履歴や行動データをAIで解析し、最適なタイミングで適切な広告・メールを配信するなど、きめ細かな顧客アプローチを実現しました。これにより、一人ひとりの嗜好に合ったコンテンツ提供が可能となり、反応率やエンゲージメントが向上しています。
特筆すべきは、キャンペーン効果のリアルタイム測定と迅速なPDCAサイクルの確立です。AIが刻一刻と変化する顧客の反応を捉えて戦略修正を支援するため、ROI(投資対効果)の向上が達成され、マーケティング予算の効率的な活用にもつながりました。ソフトバンクはAI活用によって、マーケティングの精度とスピードを飛躍的に高め、顧客体験の質向上と自社の競争力強化を両立させています。
飲料メーカー:日本コカ・コーラ
コカ・コーラ社はブランド戦略の一環で、地域ごとに異なる限定デザインのボトルやロゴを展開していますが、そのデザイン作成にAI技術を活用しています。例えば観光地限定デザインのボトルでは、各土地の名所やシンボルをモチーフにしたグラフィックをAIが迅速かつ効率的に生成し、地域の特色を反映した独自ボトルを次々と生み出しています。これにより、各地域の消費者に「自分ごと」として感じてもらえるプロモーションが可能になり、ブランドへの愛着や話題創出に繋がっています。
AIは無限に近いデザインパターンを試行できるため、デザイナーの発想を拡張しつつスピードも飛躍的に向上させました。コカ・コーラのケースは、ブランディング分野においてもAIが有効なツールであることを示す好例です。消費者の嗜好データや地域の文化的要素というデータセットをAIが学習することで、ターゲットごとに最適化されたクリエイティブ制作が実現し、結果として広告効果や顧客との心理的距離を縮める要因となっています。
その他
このほかにも、自動車メーカーがAIチャットボットで顧客問い合わせに24時間対応して顧客満足度を高めたり、コンビニエンスストア業界がAIによる需要予測で品切れ防止と在庫最適化を図りつつ、そのデータをマーケティング分析に活かそうとする動きもみられます
例えば、トヨタ自動車ではWebサイト上にAIチャットボットを導入し、顧客からの問い合わせに即座に回答することでユーザーの待ち時間を大幅短縮し、コールセンターなど人が対応していたコストを削減しています。
また、ローソンは無人レジ店舗の実験を通じて来店客の属性や購買データを収集し、AIに学習させて商品の発注・在庫管理精度を上げるとともに、そのデータをマーケティング戦略にも活用しようとしています。このように業種を問わず、データドリブンな発想でAIを活用したマーケティングの革新が進められています。
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統計データとAIの連携が生むマーケティング戦略
上述のような企業の事例から明らかなように、マーケティング分野で成果を出すためにデータの力を最大限に活かすことが、実際に進められています。ここで改めて注目したいのが、政府統計などのオフィシャルデータとAIとの連携です。総務省統計局や内閣府が提供する人口・経済・消費に関する豊富な統計データは、マーケティング戦略の土台となる市場インサイトを与えてくれます。AIはこれら大量の構造化データを迅速に分析し、人間が見落としがちなパターンを、短時間で発見する能力に優れています。誰でも取得することができる公的データなどを活用し、データとAIの組み合わせによって、より精緻で説得力のあるマーケティング戦略の構築が可能になっていきます。
例えば、前述した人口推移のデータは、将来の市場規模予測や地域別ターゲティングに直結します。AIに人口減少や高齢化の統計を学習させ、自社の顧客データと掛け合わせることで、将来的にターゲットとすべき顧客層や地域を予測することができます。人口構成の変化から「5年後にはこの地域で高齢世帯が◯◯%増える」といった予測を立て、その地域向けにヘルスケア関連商品を投入したり、広告予算を重点配分するといった戦略判断が、データに裏付けられて可能になります。また、政府の家計調査データから年代・所得階層ごとの消費傾向をAIが分析することで、新商品のコンセプト策定や価格戦略の検証も、より精度が上がり迅速に対応できるようになるでしょう。たとえば「20代単身者は外食費は高いが家具への支出は少ない」などの分析結果が得られれば、そのセグメントに響くプロモーション施策(SNS上での手軽なレシピ動画広告など)が立案できますし、逆にシニア層には健康志向を踏まえた内容で訴求するといった具合に、パーソナライズされたマーケティングが統計データとAIの力で実現できます。
実際に、公的統計データとAIの融合によるマーケティング支援サービスも登場し始めています。大日本印刷(DNP)が2025年に提供を開始した「生成AIマーケティングサービス(ペルソナインサイト)」は、その代表例です。同社は総務省の統計データを基に、日本人の年齢・性別・職業・健康状態・価値観などの分布を反映した100人分のペルソナ(仮想生活者)をAI上に構築しました。企業のマーケターは、このペルソナとチャット形式で対話し、まるで本物の生活者から話を聞くように意見や反応を引き出すことができます。従来は時間とコストのかかるモニター調査やグループインタビューが必要だった消費者インサイトの収集を、AIが代替する画期的な試みです。統計データに裏付けられたペルソナは、日本市場全体の多様な消費者像を仮想的に再現しており、企業は新商品のコンセプトや広告クリエイティブについてペルソナに意見を問い、得られたフィードバックを商品開発やマーケティング戦略のブラッシュアップに活用できます。もちろん、あくまで仮想ですし実際に購入する人間ではないため、モニター調査などに比べて精度を高めるためには繰り返し検証する必要がありますが、早くPDCAを回せるといったメリットがあります。これは政府統計データという信頼性の高いデータと生成AIの融合によって生まれた新たなマーケティング手法であり、より深い顧客理解とインサイト抽出を容易にした点で注目されています。
このような取り組みは始まったばかりですが、今後の展望として、政府統計とAIの連携がマーケティング戦略に組み込まれるケースはますます増えていくでしょう。AIが需要予測モデルに反映させて広告投下のタイミングを調整するといったことも技術的には可能になるでしょう。マーケティングの世界でもPDCAサイクルの高速化が求められる中、公共データと自社データの両面からAIが示唆を与えてくれる体制を整えることが競争優位につながるでしょう。
データとAIで切り開くマーケティングの未来
少子高齢化や価値観の多様化に直面する日本市場において、従来型の勘や経験だけに頼ったマーケティング手法は限界を迎えつつあります。これからのマーケティング戦略に求められるのは、確かなデータにAIの分析力を掛け合わせた科学的アプローチです。人口構造や消費動向の大きな潮流を読み解きつつ、AIの力でミクロな購買行動や嗜好の変化まで捉えることで、企業はこれまで見落としていた商機を発見できる可能性があります。
実際、AIマーケティングを積極活用する企業では顧客体験の最適化や広告ROIの向上、ブランドエンゲージメント強化といった成果が現れ始めています。重要なのは、データに基づき迅速に施策を打ち出し、結果をまたデータで検証して次に活かすというサイクルを回すことです。
AI時代のマーケティングでは、人間のクリエイティビティとAIのロジックの融合が求められます。豊富な統計データから得た市場の洞察を出発点に、AIで顧客一人ひとりのニーズまで掘り下げるといった、データドリブンかつ顧客中心の戦略を描ける企業こそが、これからの競争を制すると言えるでしょう。データとAIを味方につけた企業は、急速に変貌するマーケットにおいても柔軟に舵を切り、新たな価値を創造し続けることができるはずです。政府統計×AIの力を最大限活用し、論理的かつ創造的なマーケティング戦略で次代のビジネスチャンスを切り拓いていきましょう。
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