企業が就職活動を予定している学生向けに「インターンシップ」を開催することは、今の時代では当たり前のアプローチ方法となっています。これから新しくインターンシップを開催しようとしている企業は、どのような準備をすればよいのかわからないことも多いでしょう。本記事では、インターンシップの効果をしっかりと発揮させるために必要な受け入れ準備について解説します。また、インターンシップの定義について2022年に策定された「三省合意」も説明します。
インターンシップの目的をおさらい
まずは、インターンシップはどのような理由で開催され、企業側・学生側それぞれにどのような目的・意図があるのかについて解説します。
企業側の目的
インターンシップを開催する企業側には、主に以下のような目的・意図があります。
- 学生とのミスマッチを防ぐ(企業理解を深める)
- 優秀な学生と接点を持つ
- 学生の育成期間として活用する
基本的にインターンシップは「採用にあたっての準備期間」のような立ち位置となっています。企業は就活生向けにさまざまな情報発信を行いますが、文章ベースの一方的な情報発信だけでは十分な情報を就活生に与えることは難しいです。
インターンシップでは、実際に企業での仕事の環境に就活生を置くことにより、企業の雰囲気や仕事の実態などを学生に理解してもらいます。これにより、就職後のミスマッチを回避し、かつ経験値を獲得した学生を即戦力ないし経験のある戦力として自社に組み入れることができます。
学生側の目的
インターンシップに参加する学生側には、以下のような目的・意図があります。
- 業界への理解を深めたい
- 特定の企業の社風が知りたい
- 自身の経験・スキルアップにつなげたい
- 自分の適性を知りたい
学生側も、企業側と同じく「普通の情報発信を得るだけでは得られない知識と経験」を、インターンシップへの参加を通じて獲得したいと考えています。就職のミスマッチは企業側にとってデメリットになるだけでなく、学生にとっても貴重な時間と新卒入社の可能性を無駄にしかねない回避するべき事態です。
インターンシップで学生の企業に対するエンゲージメントが高くなれば、たとえ入社することにならなかったとしても、その学生が情報発信することで企業の社会的評価が上がったり、その学生が他社に行った場合でも有力な取引先になる可能性もあります。
三省合意におけるインターンシップの定義
前述したように企業側も学生側もインターンシップを開催・参加することで、就職活動におけるメリットは大きいのですが、2022年6月に改正されるまでは、インターンシップで取得した学生情報を、採用活動に使用することは禁止されていました。
理由としては、参加した学生としない(できない)学生が不公平に扱われることや、実質的に就職活動が早期化すること、学生にとって社会活動における学びの意義が損なわれることなどへの懸念がありました。しかし、実際には実務経験や企業理解を深めることでミスマッチを防ぐことは企業だけではなく学生にもメリットが大きいため、本来の学生インターンシップの意義を損なわないようにバランスをとる方針となりました。
そこで、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省が共同で「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を改訂しました。簡単に説明すると、本来のインターシップの意義に合わない活動はインターンシップとは称さず、一定の基準を満たしたインターンシップで取得した学生情報は採用選考活動に使用可能となりました。以下の「3.汎用的能力・専門活用型インターンシップ」のみが使用可能です。
インターンシップとは称さない(就業体験を行わない)
1. オープン・カンパニー:企業説明会や業界説明会などのセミナー形式
2. キャリア教育:大学や企業などが実施する教育プログラム
インターンシップと称して実施(就業体験が必須)
3. 汎用的能力・専門活用型インターンシップ:職場での実務経験を通して、学生が自身の適性を見極めることができるインターンシップ
4. 高度専門型インターンシップ:修士課程以上の学生を対象に、専門性が高い職場での実務経験ができるインターンシップ
就業体験要件:実施期間の半分以上の日数を就業体験に充当
指導要件:職場の社員が学生を指導し、学生にフィードバックを行う
実施期間要件:汎用的能力活用型は5日以上、専門活用型は2週間以上
実施時期要件:卒業・修了前年度以降の長期休暇期間中
情報開示要件:学生情報を活用する旨等を募集要項等に明示
インターンシップの内容設定
次に、インターンシップの内容設定について解説します。
オープン・カンパニー(セミナー型)
「セミナー型」では、会社説明会と同じようなイベントを開催し、学生に企業知識を深めてもらうことができます。多くの学生に自社のことを宣伝することが目的であれば、セミナー型のインターンが有効となるでしょう。ただし、現在ではインターンシップと呼ぶことは推奨されていません。
- 事業内容の説明
- オフィス、工場の見学
自社情報や募集要項をまとめることが企業側のメインの準備となるでしょう。そのほかのインターンタイプと比較すると、準備の負担が小さいといえます。
セミナー型のインターンは多くの場合、1日で完結するため当日運営にかかる負担も小さいです。
学生としても、1日であれば時間を確保しやすいため、手軽に応募できることになります。そのため、以下で紹介する「プロジェクト型」や「就業型」に比べると、学生を集めやすいことも特徴の1つといえます。
前述した通り、セミナー型は他のタイプと比較すると、取り組みの中で学生の意欲や適性などを判断することは難しく、採用選考活動に学生情報を使用することも禁止されています。他のタイプのインターンシップと組み合わせて実施しないと、採用活動にはあまり有効とは言えません。
キャリア教育(プロジェクト型)
「プロジェクト型」では、特定のテーマを設定し、体験を通じて学生に企業知識などを学んでもらうことができます。こちらも厳密にはインターンシップとは称しません。
- グループワーク
- グループディスカッション
- プレゼンテーション
設定する課題は企業によって異なりますが、課題に対する集大成を一定の形にまとめることを学生に求めるケースが多いようです。
学生は自分が持つ知識やスキルなどを駆使して、企業側が与えるテーマや課題に取り組みながら、総合的なビジネススキルを身につけることができます。そのため、プロジェクト型では、スキルに自信がある学生や向上意欲が強い学生を集めることができるでしょう。
セミナー型と比較すると、プロジェクト型は学生をプロジェクトに参加させワークさせるため、1人1人の性格や考え方、適正を図ることができます。
ただし、こちらも就業体験のインターンと組み合わせるなどしないと、単体では採用活動に学生情報を使用することができません。また、プロジェクトのテーマを設定する準備が必要になる点や数日間担当する人的リソースが必要になる点が注意点として挙げられます。
就業型
「就業型」では、実際の体験を通じて、学生に企業風土や仕事の流れなどを知ってもらうことができます。就業体験がないと、厳密にはインターンシップとは言えなくなっているので、必ず実施する必要があります。
実際の業務を学生に体験させることから、就業型のインターンを開催すると「ミスマッチを減らす」、「事前に学生を育成する」、「学生からの意見を業務に反映する」といった効果を得ることができます。
ただし、インターンシップの受け入れには、前述のタイプ以上に準備が必要となります。事前準備や当日のフォローが必要な点はプロジェクト型と変わりありませんが、何かを想定したディスカッションやグループワークではなく、会社の利益に関わる実際の業務であることから、フォロー体制はより充実させる必要があります。
インターンシップの期間設定
次に、インターンシップの期間設定について解説します。
短期:1日〜3日
インターンシップの中には、1日~3日間という極めて短期間で完結するケースがありましたが、採用活動にインターンシップを活用するためには最低でも5日間必要であるため、現在ではあまり実施されません。セミナー型はこれに該当するケースが多く、短期間なので企業側にも学生側にも負担が小さいでが、インターンシップで得られるメリットも小さくなるので注意が必要です。
中期:1週間〜
1週間~2週間程度をインターンシップに割くケースです。ある程度の長さで実施するため、学生側にインターンシップ(就業体験)の中で課題を与え、時間をかけてその成果を出してもらうことができるようになります。ただし、準備など受け入れに必要な負担は短期の場合よりも大きくなります。自社の目的にあった理想的なインターンシップを開催するには、受け入れ体制を整えることや、繰り返しインターンを実施しPDCAを回していく必要があります。
長期:1ヶ月〜
インターンシップの中には、1か月以上の長期にわたって実施されるものがあります。1か月以上の就業体験をすることで、しっかりと企業の雰囲気を味わってもらうことができるため、就職後のミスマッチを大幅に削減することができます。学生側の負担も大きいため、受け入れにおいては事前準備だけでなく、実施中のフォローも欠かせません。
インターンシップの参加方法設定
次に、インターンシップの参加方法の設定について解説します。
- 選考型
- 先着型
- 参加型
それぞれの参加方法ごとに、特性が異なります。インターンシップに参加したい学生本人の意欲をしっかりと確認したい場合には「選考型」を選択するのが良いでしょう。
受け入れる企業のキャパシティやインターンシップの内容に合わせて、人数制限を実施するのが良いと判断する場合には「先着型」を採用して、参加人数を制限をするケースもあります。
多くの学生を集めたい場合には「参加型」を活用するケースが多いです。
このように、実施するインターンシップの内容や受け入れる企業側のキャパシティ等の問題に応じて、参加する学生の応募方法を決定する必要があります。
また、効率的に学生を集めるためには、参加方法を思案するだけでなく、募集方法を工夫する必要があります。ガクセイ協賛では、学生のインターンシップ、アルバイト、社員採用のお手伝いも行っています。全国800大学の学生・8,000学生団体(サークルや部活、ゼミなど)にアプローチできるサービスなので、学生を効率的に確保したいとお考えの方はぜひご相談ください。
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インターンシップの報酬設定
次に、インターンシップの「報酬」の設定について解説します。
- 無給
- 有給
セミナー型や、プロジェクト型の中でも学生の教育や研修の意味合いが強い場合に、無給で開催されるケースが多いです。
報酬が支払われないインターンシップとは、企業は学生に「無償で労働させる」ことを目的とせず、教育的な内容である場合に限ります。
一方、学生を労働力と認識してインターンシップを行う場合、有給とする企業が多いようです。多くの場合、実際に支払われる給料に対して十分な対価をもたらすわけではないですが、売上に貢献しなくても給与を支払うことで企業の宣伝活動の一環とすることがあるのです。
また、労働基準法では、インターン生が労働者とみなされる場合は、通常の雇用と同様に報酬を払わなくてはいけません。労働者とは、①企業とインターン生との間に指揮命令関係があったか、②インターン生が携わった作業が企業に利益・効果をもたらしたかの2つの観点から労働者性の有無を判断するとしています。
インターンシップの受け入れ準備
最後に、インターンシップの受け入れに必要不可欠な準備内容について解説します。
目的設定
漠然とインターンシップを開催することを目的としてはいけません。具体的に何かしらの課題解決の手段として活用しましょう。
例えば、「離脱率が高い」「応募数が少ない(露出が少ない or 書面だけでは魅力が伝わっていない)」など新卒採用における課題を明確にしましょう。この課題を解決するためにインターンシップの開催によって実現したいことを考えて、目的を具体化します。
例えば、「自社の魅力を仕事を通じて知ってもらい、離脱率を下げる」であったり、「まずは自社を知ってもらうために、たくさんの学生が気軽に集まれるインターンシップを開催する」など明確な目的設定をして、その上でインターンのタイプや期間、型などを逆算的に選択していきましょう。
企画書(タイムスケジュール)の作成
インターンシップ内でどのようなプログラムを、どういった流れで、どの程度の時間行うか、どのタイミングで休憩をとるのかをしっかりと決めておきます。これを決めておかないと、当日の混乱につながりますので、短期・中期インターンシップであれば可能な限り詳細に設定し、長期インターンシップの場合も最初の数日間のスケジュールはきちんと確定しておきましょう。
同意書・誓約書の作成
同意書や誓約書には、「情報漏洩」に関する内容を記載します。学生が企業の機密事項などを漏洩させてしまった場合、企業の信用問題に関わります。
雇用契約書の作成
有給型のインターンシップの場合は、雇用契約書の準備が必要です。社員用の雇用契約書と全く同じ内容でいいとは限りません。準備ができていない場合は専門家への相談をしたうえで、インターンシップ用の不備のない契約書を作成しましょう。
担当社員の確保
実践的なインターンシップを実施する場合は、あらかじめ協力部署や担当社員を決めておく必要があります。インターンシップに参加する社員を、学生へのフォローに注力させるため、期間中は通常業務を外れて対応できるよう、部署内外での調整が必要です。
連絡ツールの決定
インターンシップに参加する学生との連絡手段はきちんと決めておきましょう。直接の連絡が可能な場合は問題ありませんが、エージェント等が間に入っている場合には何らかの手段を提示して直接の連絡ができるようにしておく必要があります。
会場の確保
多くの場合、自社の社屋を利用することになりますが、大人数で開催する場合には外部の施設を手配して実施する必要もあります。
飲食物の手配
必要であれば、昼食用などに飲食物を手配しておく必要があります。飲食系の企業であれば、自社製品を活用することも可能です。
アンケートの作成
インターンシップでは、アンケートを実施して内容を評価し、次回の採用活動に活かすことが重要です。「プロジェクトの難易度」や「企業への理解度」、「社員対応」、「期間」などの項目を設け、目的にそったインターンが実施できているのか、そのうえで学生が有意義な時間を過ごせる内容になっているのかを見極め、改善に役立てるようにしてください。
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