ビジネスの成長に欠かせない「マーケティング」、一口にマーケティングといってもさまざまな手法があります。本記事では「メールマーケティング」に注目し効果や実践方法について解説します。
メールマーケティングとは?
「メールマーケティング」とは、電子メールを用いたマーケティング手法です。
メール配信を通じて顧客とのコミュニケーションを確保し、営業活動の効果を高めることができます。
昨今、SNSの普及・利用者の増加により、従来型の電子メールは廃れてきたと感じる方も少なくありません。しかし、ビジネスの世界においてはメール配信を利用したマーケティング手法はまだまだ現役であり、しっかりとテクニックを把握して活用することで効果的にプロモーションすることが可能になります。
よく、メールマーケティングと「メールマガジン(メルマガ)」を混同する方もおられますが、厳密にはこれらの手法は異なる概念です。
メールマガジンはメールマーケティングの手法の1つであり、メールマーケティングはメールマガジン以外にもさまざまな手法があります(具体的な手法については後ほど解説します)。
今どき、メールって効果はあるの?
かつてビジネスの最前線でコミュニケーションツールとして利用されていた「電子メール」ですが、若年層への告知・連絡手段としてはだんだんと価値が薄れているのかもしれません。
総務省が行ったインターネット利用時間の内訳の調査で「メールを読む・書く」の割合は20代で22.9%でした。50代は55.4%、60代は53.0%です。その理由は若者たちの間で「SNSを見る・書く」の割合が高まっているためです。具体的にはメールではなくLINEやTwitterなどのコミュニケーションツールが広まっています。
連絡手段が「SNS」に取って代わられているのは若者だけではありません。50代のLINEアプリの利用率の調査において、平成28年時点での利用率が53.8%であったのに対して令和2年では85.4%に上昇しています。
コミュニケーションツールとしてのメール利用者は減っていますが、ショッピングやサブスクリプションなどサービスを利用する際などメールを利用する機会はまだまだあります。ビジネスシーンにおいてはなおさら健在です。
メールマーケティングは現代社会においてまだまだ有効なマーケティング手法ではありますが、メール以外を活用したマーケティング手法についても平行して施策を進める必要があると言えるでしょう。
出展:令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
メールマーケティングのメリット
次に、ほかのマーケティング手法と比較した際の、メールマーケティングの特徴について解説します。
紙媒体よりもコストが低い
メールマーケティングは、紙媒体(紙の広告・チラシなど)と比較すると、安いコストで運用できるというメリットがあります。
紙のダイレクトメールを発送する場合は、ハガキ代と印刷代、それに郵送料などの費用がかかります。
一方でメールマーケティングの場合であれば、メール配信ツールや効果測定用のツールを導入するための費用、それにメールマーケティング運用担当者の人件費くらいでしょう。対象となる顧客1人あたりのコストで考えてみると、メールマーケティングのほうが大幅に安いコストで運用できるケースが多いです。
コンバージョンレートが高くなりやすい
メールマーケティングは、従来型のマーケティング手法と比較してコンバージョン率が高くなりやすいというメリットがあります。
メールを配信する対象となる顧客は、すでにメールのテーマ(商品カテゴリーなど)に強い興味関心を持っています(メルマガ等に登録しているユーザーに発信するため)。
そのため、無作為にポスティングするなどセグメントが難しいマーケティング手法と比較して顧客の反応が良いケースが多く、販売・契約などのアクションにつながりやすい点がメリットです。
属性に応じて内容をパーソナライズできる
メールマーケティングは、顧客の属性などの条件に応じてメールの内容をパーソナライズ(各人に合わせた調整が)しやすいというメリットがあります。
例えば、過去の購入履歴やお気に入り登録した商品などの条件に合わせて、メールでおすすめする商品・サービスの内容を顧客ごとに調整しやすくなります、紙媒体の場合だと印刷コストの観点から各顧客ごとに合わせた内容変更が難しいのですが、メール内容を変えて送信するだけで済むため、低コストでパーソナライズ可能であり、情報を必要としている人にメールを届けるためコンバージョン率の向上にもつながります。
効果測定しやすい
メールマーケティングは、実施した効果の測定がしやすいというメリットがあります。
ポスティングやポスター広告などを実施する場合、そのプロモーション方法がどの程度まで売上や認知度アップに貢献したのかが判断しにくいです。
メールマーケティングの場合、メール内にURLを配置するなどの方法でメールからの流入人数がわかるため、プロモーション方法としての効果がどの程度表れたのかを明確に判断可能です。
メールマーケティングのデメリット
次に、メールマーケティングが他のマーケティング手法と比較して劣っていると考えられる部分について解説します。
長期的な運用が必要
メールマーケティングは、どうしても長期的な運用が必要になってしまうというデメリットがあります。
自社の登録ユーザーを使ったメールマーケティングは、リストの登録者数が少ない初期段階では効果が出にくいです。また、初期段階では効果的なメール手法が手探りになってしまうため、実測した効果次第では途中で挫折するケースが多いのも無視できません。
そのため、メールマーケティングで十分なプロモーション効果を発揮するためには、長期間継続して社内でノウハウを蓄積する必要があり、基本的に長期的な視点で効果を見ていく姿勢が重要です。
ユーザーに合ったメールでなければ効果が出にくい
メールマーケティングは、個別のユーザーに合わせた内容のメールにカスタマイズしないと十分な効果が出にくいというデメリットがあります。
リストの顧客に対して一斉に同じ内容のメールを送信する場合、同じチラシやポスターを目にする従来型の広告手法となんら変わらない手法としての効果しか実感できません。そのため、顧客を属性や購入履歴などの条件でセグメントし、可能な限り顧客ごとにパーソナライズしたメールで攻めないと十分な効果を得られないということを念頭に置いて、メールマーケティングを進めていく姿勢が重要です。
メールマーケティングの種類
次に、メールマーケティングの具体的な手法について解説します。
メルマガ
「メルマガ」は、新商品の情報やユーザーにとって利益となるような情報を盛り込んだメールマガジンを送信する手法です。メールアドレスを登録している顧客リストに対して一斉にメールを送信できるため、コストや手間を抑えてメールマーケティングを実行できます。
ただし、パーソナライズされていないメールは前述の通りメールマーケティングとしての効果を十分に発揮することが難しくなってしまいます。
顧客の属性やどの段階の顧客であるか(最新の新規顧客なのか、ある程度ファン化している顧客なのか)に関わらず有益な情報を盛り込んだ、誰にとっても魅力的なメルマガを用意することが重要です。
ターゲティングメール
「ターゲティングメール」は、メルマガと同じく顧客リストのメンバーに対してメールを送信する手法ですが、顧客の属性や行動履歴などでセグメントして送信相手を限定する手法です。送信するのは顧客にパーソナライズされているメールであるため、より売上や認知度アップなどの効果につなげやすくなります。
ただし、顧客をセグメントして限定した相手にだけ送信するため、送信相手の母数(全体数)はどうしても通常のメルマガよりも少なくなってしまいます。また、属性などの条件でリストの顧客をセグメントする手間がかかってしまうため、送信先1人あたりの手間やコストは増加することを念頭に置きましょう。
ターゲティングメールについて、詳しく知りたい方は「ターゲティングメールとは?」の記事を参考にしてください。
休眠顧客発掘メール
「休眠顧客発掘メール」は、休眠顧客(かつて自社の顧客だったが、現在では購入などのアクションを起こしていない客層)を再び自社の顧客に戻すために送信されるメールです。すでにメールアドレスを登録してもらっているため、新規顧客を集めるよりも低コストで顧客化しやすくなります。
休眠顧客化した理由は顧客ごとに異なります。理由のヒアリングし内容をパーソナライズすることは難しいため、アピールポイントを絞ったメールを一斉配信したほうが効率的です。休眠顧客を発掘するためのアピールポイントは可能な限りシンプルにまとめて、読んでくれた休眠顧客をうんざりさせない工夫が必要になります。
ステップメール
「ステップメール」は、顧客が起こしたアクションを起点としてメールを何段階かに分けて配信し、徐々にアピールして最終的に売上などにつなげるメール手法です。顧客の行動段階に合わせて最適な行動を促すためのメールを送信するため、効率よく売上アップなどの効果に直結します。
ただし、ステップメールは1つのシナリオを複数の段階に分けてメール配信するため、1つのシナリオで複数のメールを準備する手間がかかってしまいます。また、顧客ごとにパーソナライズすることが難しいため、メールマーケティングの効果を十分に発揮するためにはメールの内容を精査することが重要です。
リターゲティングメール
「リターゲティングメール」は、自社に対して何らかのアクションを起こしてくれた顧客に対して、次の行動を後押しするために配信するメール手法です。資料請求や購入など、自主的に行動してくれた顧客に対してメールを配信するため、さらなる購入意欲をより強くさせる効果を発揮します。
ただし、あまりにも「これがオススメ・次はこれがオススメ」と過度な提案をしてしまうと、顧客はうんざりしてしまって購入意欲が逆に減退してしまいます。
あくまでも顧客の利益につながるような、ユーザー目線で利益を追求するようなメール内容にして、顧客にマイナスの感情を抱かせないように工夫しましょう。
メールマーケティングを実施する流れ
最後に、メールマーケティングを実施する際のおおまかな流れを解説します。
STEP1.目標の設定
まず最初に「メールマーケティング実施における目標を設定する」ことからスタートします。
- 配信数
- 到達率
- 開封率
- クリック率
- コンバージョン率
「資料請求の数を増やしたい」「自社開催のセミナーの参加者を増やしたい」など、メールマーケティングの実施にはさまざまなゴール(目標)があります。
設定したゴールによってメールで配信する内容が大きく変わってくるので、メールを配信する目的を明確に決めてから配信を始めないと途中で頓挫してしまうリスクが高まるでしょう。
そうならないようにするためには、メールマーケティングを始める前にきちんと「KGI(重要目標達成指数)」と「KPI(重要業績評価指標)」を明確にしておきましょう。何を重視するかで今後の方針も大きく変化します。
開封率について詳しく知りたい方は「ターゲティングメールの開封率、目安となる数値と改善方法」の記事を参考にしてください。
STEP2.メールアドレスの獲得
次に、「メールを送信する相手となる顧客リストを作成する」という段階です。
ポスティングのように「特定のエリアに投函する」「特定の場所でポスターを貼り付ける」といったような手法と異なり、メールマーケティングは送信先となるメールアドレスがわかっていないとメールを送信することができません。そのため、送信先となるメールアドレスを一覧化したリストを作成する必要があります。
例えば「会員登録時にメールアドレスを登録してもらう」「資料請求時にメールアドレスを入力してもらう」といった方法があります。
もし、大学生の登録者(メールアドレス)を集中的に集めたいのであれば「ガクセイ協賛」がソリューションとなるでしょう。
学生をターゲットにしたメールマーケティングを検討中であれば、ぜひガクセイ協賛までご相談ください。
STEP3.メールコンテンツ作成
メールアドレスが十分に集まったら(もしくは収集段階で並行して)「送信するメールの内容を決める」という段階になります。
メールの配信目的やターゲット(ペルソナ:ターゲットの理想像)、メールによって何を顧客に対してアピールするのかを明確にしないと、送信するメールに一貫性が確保できません。一貫性のないメールは顧客に不安や違和感を与えることになり、メールマーケティングの効果が十分に発揮されなくなってしまいます。
最初に決めた目標に合わせて、顧客がどのような行動をとるかを視覚化した「カスタマージャーニー」を設定しましょう。
顧客にとって有益な情報・関心を集める内容を盛り込んだメールを配信することによって、顧客の購買意欲や行動意欲を高められるようにすることが重要です。
STEP4.メール配信
次はいよいよ「メールを顧客に配信する」という段階です。
手動で1人ずつにメールを配信することは、低コストで運用できることが魅力のメールマーケティングには似合いません。そのため、メール配信ツールなどを導入し、いかに効率よくメールを配信できるかを追求することが重要です。
STEP5.効果測定
メールを配信し終えたら、最後に「効果を測定する」という段階になります。
配信したメールから得られたデータを、数値ごとに分析します。例えば「開封率が低い」ことが判明したのであれば、件名やセグメントに注目し、「リンクのクリック率が低い」のであれば、メール内容を見直すといった改善につなげましょう。
メールマーケティングを成功させるためのコツ
最後にメールマーケティングを成功させるための基本的な戦略を紹介します。
1.短期的な効果を期待しない
デメリットパートでも解説しましたが、メールマーケティングを運用するには中・長期的なシナリオで考えなければいけません。
十分な顧客データとノウハウを蓄積しなくては、効果的なメール配信はできません。また、顧客も反復的にメールを受け取ることで少しずつ興味を示してくれます。始めは手探りの状態が続くと思いますが、目先の利益がでないからといって廃止してしまうのは早計かもしれません。
2.セグメントとタイミングを意識する
メールマーケティングを効果的に活用している企業のほとんどは、適切なセグメントと適切なタイミングでメール配信をしています。
とにかく母数を送ることで成果につなげたい気持ちもわかりますが、興味のない人に対しても一律の内容でメールを送信し続けると離脱や拒否されてしまうリスクがあります。
また、誰に何を送るかだけでなく、いつ送るのかも重要なファクターです。開封率や読了率、購買率など様々な数値を時間帯で比較しデータを集め、ファクトに基づいた意思決定ができるようにしましょう。
3.PDCAやテストを回す
メールマーケティングを成功させるためには様々な検証が必要となります。データ分析や効果検証を得意とする担当者が必要となります。
タイトルや画像、文章、ボタンリンク、誘導文章などコンテンツを最適化するために細かな要素を切り分け、1つ1つを最適化していきましょう。
4.運用が難しければツールの導入も考える
メールマーケティングを成功させるためには、顧客のセグメントや効果測定が重要になると解説しました。こうしたデータ管理をスプレッドシートやエクセルなどを使ってマンパワーだけでやり遂げることは難しいです。
規模感が大きく管理が難しくなるのであれば、顧客管理やレポーティングを自動化してくれるようなマーケティングツールを導入してみることを考えてみるのもいいでしょう。
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